救急治療〜尿管閉塞に対するSUBシステム〜
こんばんは、院長です。
昨晩はなかなかの雪でしたね。
小さい頃は楽しかった雪も大人になると怖く感じることが多くなりました。
といっても、私は病院から出ない引きこもりだったので問題なかったのですが。
皆さんはトラブルなく過ごされたでしょうか?
さて今日は尿管閉塞という怖い病気に対するお話です。
このように寒い時期になると、泌尿器関係の病気が増えるように感じます。
特に猫ちゃんでは。
フードが関係しているとも言われていますが、
飲水量が冬場は少なくなるのも問題かもしれません。
今回は尿管という腎臓と膀胱を繋ぐ管が閉塞してしまい急性腎障害になった猫ちゃんです。
数日間はホームドクターのもとで内科治療を頑張られたのですが、
内科治療では管の閉塞が解除できないため当院での手術を希望来院されました。
治療前の腎臓ですが、尿管・腎盂といった部位が閉塞により拡張してしまっているのがわかります。
腎臓の悪化状態を示す血液検査の結果も
クレアチニン:27(正常は1.8以下)、カリウム値:7.4(正常は3.5~5.0)と非常に高くなっていました。
こうなてしまうと手術も危険な状態です。
しかし何もしなければ亡くなってしまうのは明らかです。
オーナーさんも非常に悩まれた結果、手術に臨むこととなりました。
通常尿管での閉塞では結石などが問題となることが多いため、それを摘出する手術を選択します。
しかし尿管の外科はとても繊細で時間がかかります。
おそらく麻酔に耐えられないでしょう。
ですので今回は片側の腎臓を人口チューブによるバイパスで素早く救出して尿を確保した後に、
もう片方を尿管切開を実施することとしました。
この腎臓と膀胱をつなぐバイパスシステムはSUBシステムといわれるものです。
近年開発されたシステムで、今までは尿管閉塞で手術もできない子達も多く助かるようになっています。
もちろん人工物を身体に入れるので、できるだけ使わないに越したことはありません。
しかし手術時間が圧倒的に短くなることや、尿管が広範囲にわたって狭窄や閉塞している際などには役立ちます。
夜遅くからの手術開始となりましたが、皆頑張ってくれます。
そして今回は私の外科認定医仲間の滋賀県の先生がヘルプで来てくれました。
SUBシステムをすでに自院で取り入れ、多くの症例を助けられています。
そして今回は私が尿管切開を担当してのコラボ手術となりました。
怖い写真になってしまいますが、このように腎臓と膀胱にチューブをセットして尿の迂回路を使うことで腎臓を助けることができました。
そして尿が確保されれば、点滴などを多く使えるようになり麻酔も安定します。
そこで私が反対側の尿管を切開、フラッシュすることで閉塞を解除しました。
これが尿管を縫合した写真になりますが、このように尿管は非常に細いです。
拡張していない際の内径は1mmもないと言われています。
ですのでこの部位の手術は時間がかかりますし、繊細な手技を求められます。
今回は画期的なSUBシステムのおかげで無事に麻酔も安定化し、手術を乗り切ることができました。
そして翌日以降の入院治療でどんどんと状態はよくなって・・・
もともと凄く高かった腎臓の数値も下がってくれました。
本人も意識朦朧でぐったりしていた状態から、元気にご飯を食べれるようになって退院してくれました。
今後も人口チューブの洗浄などの定期的な通院は続きますが、無事に三途の川から戻って来てくれてホッとしています。
オーナー様も喜んでくださいました。
このように獣医療ではどんどんと新しいシステムや術式、治療薬が開発されています。
多くの命がそれで救われるようになって来ています。
しかし我々獣医師が勉強をやめてしまえば、その治療も受けることができません。
これからも新たな治療を積極的に取り入れていけるように勉強に励みたいと思います。
院長
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動物の総合健康管理施設右京動物病院 HEALTH CARE CENTER・SAGANO
JAHA認定 総合臨床医・外科医/ 国際中獣医学院認定 中獣医鍼灸師
ISFMキャットフレンドリークリニック ゴールド認定