前立腺癌
6月1日(金)
分院長の太陽です。
今回は前立腺癌についてです。特に診断に至るまでのプロセスに重点を置いてお話しします。
前立腺癌はオスの泌尿器・生殖器腫瘍の中では比較的遭遇する機会の多い腫瘍で、残念ながら予後の良くない腫瘍になります。
高齢のオスに見られる腫瘍で、去勢による予防効果はありません。高い組織浸潤性(周りの正常組織に侵入していきます)と高い転移率を有します。
診断された時点で転移していることも多く、外科で取り除くことが不可能な事がほとんどです。仮に手術を行うにしても、尿道ごと切除する必要があり、多くの場合術後の尿失禁などの合併症を伴います。
今回のケースは健康診断で偶発的に見つかりました。高齢ということもあり血液検査だけでなく腹部超音波検査もお勧めした結果になります。
画像に見える真ん中の薄暗い丸が前立腺になります。通常去勢手術後はエコー検査でここまではっきりと前立腺が見えることはありません。去勢をすると通常遅くとも3週間もすれば前立腺は小さくなりますが、数年前に去勢を行なっているにもかかわらず前立腺がこれだけはっきりと大きく写ってくることはやはり異常です。
加えて前立腺の中に白い点々が複数あります。前立腺の石灰化所見の可能性が高く、前立腺癌の典型的な所見です。診断をする為に今回は前立腺マッサージを十分して、細胞をできるだけ多く尿中に落とした後、カテーテルにより採尿をしました。取れた尿を遺伝子検査にかけて、前立腺癌に特徴的な遺伝子変異があるかを調べた結果、遺伝子変異ありとなり、前立腺癌と確定しました。
今回はかなりの高齢ということ、本人の性格などを考慮した結果、内科療法を選択しました。従来からある抗炎症薬を用いた治療に分子標的薬という新しいお薬を組み合わせる治療を開始してみる予定です。新しい治療法ですがなんとか進行を遅らせる事が出来たらと思います。
前立腺癌も初期に発見できれば外科手術により根治を目指せる癌です。改めて健康診断にはエコー検査を追加してあげることをお勧めします。
ちなみにこの子は血液検査に特に異常はなくエコー検査を行わなければ、前立腺癌に気づくことはできなかったでしょう。
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