9月7日(金)炎症性乳癌
9月7日(金)
゜゚・*:.。..。.:*・゜獣医師の臨時休診のお知らせ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜
それぞれの通常の休みに加え、下記日程が休みとなりますのでご注意下さい。
詳しくはホームページの獣医師出勤表をご確認下さい。
平野:9月8日(土)午後、9日(日)、22日(土)午後
百石:9月15日(土)午後、29日(土)午後
三浦:9月16日(日)
廣畑:9月22日(土)
國廣:9月7日(金)、16日(日)
こんにちは、分院長です。
先日の台風で京都にも多くの被害が出ました。台風が去り、夜になって外に出てみると倒れた木や、落下してきた瓦が目につき、抗うことのできない自然の力を改めて目の当たりにした気がします。
我々獣医師も病気というある種の自然災害に抗うため必死に奮闘していますが、中には台風のように抗うことのできない病気もあります。
今回はそんな病気の一つである炎症性乳癌についてお話しします。
まずは乳腺腫瘍についての基本的な話からおさらいしましょう。
雌犬の胸にできたしこりの多くは乳腺腫瘍です。乳腺腫瘍のうち良性のものを乳腺腫、悪性のものを乳腺癌と言います。良性と悪性の割合は良性2に対して悪性1です。アメリカでは1対1ですがこれは大型犬が多く飼われているからです。
良性と悪性の判断は病理組織検査(切除した腫瘍を顕微鏡で観察する検査)に出さなくては判定ができないので、胸にしこりが見つかれば多くの場合まずは手術で切除するという流れになります。
病理の結果、乳腺癌であったとしても手術で取り切れていれば良好な経過を辿ることが多く、やはり外科手術が第一選択肢となります。
しかし乳腺癌の中にはその挙動が極悪で、手術すら適応にならないものがあります。それが炎症性乳癌です。
炎症性乳がんとは激しい炎症を伴っているように見える特殊な乳腺癌の臨床診断名です。
臨床診断とは我々現場の獣医師が総合的な判断の上に診断するもので、病理診断医が炎症性乳癌と診断することはできません。
特徴として
・固着性
・病変部の急速な腫大、棒状、板状に増殖
・発赤、熱感、掻痒
・疼痛
・腫瘤周辺の腫脹、四肢の浮腫
・病変は四肢にかけて広がり、中央を超えて増殖
・高い転移率
・血液凝固異常を伴うことが多い
といった項目が挙げられます。これらを総合的に判断し、炎症性乳癌と我々臨床の獣医師が診断を下すのです。
この炎症性乳癌はとてつもなく早い増殖スピードと、非常に高い転移率を有します。発見された時には病変部のリンパ管や血管内には癌細胞が大量に浸潤しており、高確率で全身転移を起こしています。
また手術は無効であるばかりか、術後傷口が癒合せず目も当てられない状況になる可能性が極めて高いことから、手術は禁忌となります。
また既存の抗がん剤等では一切歯が立たず、対症療法しかなす術がないのというのが現状です。
炎症性乳癌はその原因によっていくつかのタイプに分けることができますが、いずれのタイプも予防や予期ができず、また上記の通り有効な治療法がありません。
以前診察をした炎症性乳癌の子です。患部は赤く腫れ、対側の脚にまで広がっており、典型的な炎症性乳癌の所見です。
来院時はとても元気にしており、いつもと変わらない様子とのことでしたが、1週間ほどで虹の橋を渡りました。
本当に経過が早く、恐ろしい病気です。
しかし炎症性乳癌は来院時にはかなりの大きさになっていることが多く、3センチ以下の初期ステージのものを見かけることがありません。
しこりがとても小さい段階であれば、根治もありうるのではと私は思います。
胸に限らず、体にしこりを見つけた時は、様子を見るのではなくまず診察に来てください。
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taiyo@U-KYO-Animal Hospital