Kちゃんのケース(口腔メラノーマ)

監修者
平野 太陽

1週間で癌が消失

ワンちゃんの口の中には悪性腫瘍がよく発生します。メラノーマ(悪性黒色腫)の発生が一番多く、非常に高い転移率を有する極悪のがんとなります。根治を狙うなら顎の骨ごと切除する必要がありますが、それでも術後約半数に転移が起こります。(Tuohy ら, JAVMA 2014)

高齢のため、持病のため、費用のため、そして可愛い顔を変えたくないため、顎骨切除が選択できないことも多いのが現状です。今回は上顎の先端にメラノーマ(無色素性)が発生したKちゃんのケースを紹介します。

経過

上顎先端に発生したメラノーマ。Kちゃんはずっと腫瘍を舐め続け、食欲もなくなり、ご家族も辛い日常を過ごしておられました。かといって14歳になるKちゃんの鼻先全てを切り落とすことは到底選択できませんでした。(見える部分を切り取る腫瘍ない切除は再発も早く、無駄な外科になるため推奨されません)抗がん剤も効かない、外科もできない状況でセカンドオピニオンとして来院されました。一目見ただけでご家族のご苦労が痛いほど伝わってきました。

治療

今回は電気化学療法をご提案しました。メスを入れず日帰り処置であるため、Kちゃんに負担がほとんどないことや、腫瘍の局所制御として効果が期待できることから一番適した治療法だと思います。

詳しい術式はこちらをご覧ください。

結果

1週間後の様子です。がんは嘘のように消失。勢いよくご飯も食べれるようになり、元気いっぱいに過ごしています。一切切除はしていないので、電気化学療法の力だけで寛解まで持ち込むことができました。まだまだ知られていない治療法ですが、とても希望の持てる新しい選択肢になります。悩まれている方はお気軽にご相談ください。

監修者情報

平野 太陽

センター長

右京動物病医院OIKEをはじめ3病院4施設を運営。
獣医腎泌尿器学会 認定医。日本動物病院協会(JAHA) 総合臨床 認定医。
人間の医師の腹腔鏡技術 世界大会(団体の部)優勝。
Advanced Laparoscopy Masterclass in Bucharest(ルーマニア) ~腹腔鏡マスタークラス修了。
奈良動物二次診療クリニック第6期研修修了(腫瘍科、画像診断科、整形外科、軟部外科) NARCシニア研修修了。
『動脈塞栓術を利用した腹腔鏡肝腫瘍切除』を世界で初めて成功し世界内視鏡学会2025にて報告。

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