肝臓切除

監修者
平野 太陽

適応疾患

  • 肝臓腫瘍
  • 肝膿瘍

肝臓腫瘍は多くの場合外科切除で根治が期待できます。転移率も低く、外科手術の意義は非常に大きいものです。しかし切除には上腹部を大きく切開しなければならず、非常に大きな痛みを伴います。腹腔鏡手術では小さな皮膚切開から腫瘍を取り出す事が可能です。痛みも非常に少なく一泊で退院できます。

傷の大きさの比較

従来の開腹手術

傷の大きさ
20cm
痛み
大きい
麻酔量
多い
入院期間
7日

腹腔鏡手術

傷の大きさ
2cm
痛み
小さい
麻酔量
少ない
入院期間
一泊

腹腔鏡による肝臓切除の手順

ステップ①
毛刈り消毒

滅菌を保つため、毛刈りと消毒を実施します。腹腔鏡手術であるためリスクは低いですが、徹底した感染防止対策を講じています。

ステップ②
トロッカー設置+気腹

トロッカーと呼ばれるトンネルを設置。CO2ガスを注入し、お腹をドーム状に膨らませ器具を挿入し手術を実施します。腹圧が上昇することで、止血効果も期待でき、より安全な手術が実施できます。

ステップ③
止血帯を大血管に設置

リスクを下げるため、肝臓の根本の血管に止血帯を設置。いざという時の出血に備えます。必要な際は止血帯を締めて直ちに止血が可能となります。

ステップ④
肝臓切除

腫瘍の周りの肝臓を超音波凝固装置で慎重に切除します。クラッシュ&クランプ-テクニックと呼ばれる繊細な技術が使用されます。

ステップ⑤
血管結紮

主要な門脈や肝静脈をエンドループと呼ばれる糸で二重に結紮します。確実な止血が可能となります。

ステップ⑥
皮膚縫合

二重に結紮した肝静脈などを超音波凝固装置で切断します。状況に応じてヘモクリップという止血器具も使用します。

ステップ⑦
回収袋で腫瘍回収

腫瘍細胞を播種させないよう回収袋で確実に体外へ取り出します。

ステップ⑧
洗浄

お腹の中を2Lの滅菌生理食塩水で洗浄します。

ステップ⑨
皮膚縫合

傷口をナイロン糸で縫合し、手術終了です。抜糸がいらない皮内縫合もお選びいただけますので、お声がけください。

ステップ⑩
翌日退院

痛みもほとんどなく、翌日元気に退院できます。みんな嬉しそうに帰っていく姿が可愛いです。

監修者情報

平野 太陽

センター長

右京動物病医院OIKEをはじめ3病院4施設を運営。
獣医腎泌尿器学会 認定医。日本動物病院協会(JAHA) 総合臨床 認定医。
人間の医師の腹腔鏡技術 世界大会(団体の部)優勝。
Advanced Laparoscopy Masterclass in Bucharest(ルーマニア) ~腹腔鏡マスタークラス修了。
奈良動物二次診療クリニック第6期研修修了(腫瘍科、画像診断科、整形外科、軟部外科) NARCシニア研修修了。
『動脈塞栓術を利用した腹腔鏡肝腫瘍切除』を世界で初めて成功し世界内視鏡学会2025にて報告。

“話してよかった”
と思っていただけるように。
動物医療に関するご相談、
いつでもお待ちしています。

TOPへ戻る