乳糜胸

監修者
平野 太陽

適応疾患

  • 乳糜胸

当センターでは乳糜胸に対する術式として、心膜切開術胸管結紮術乳糜槽破壊術の3つの術式を併用しています。再発が多い疾患なので術式が多くなるため、それに応じて侵襲も大きくなります。上記の術式を実施するには、肋骨の間を大きく切開し、お腹も大きく切開する必要があります。胸腔鏡、腹腔鏡を使用するとこれらの手術が5mmの傷で完結できます。

傷の大きさの比較

従来の開胸手術

傷の大きさ
20cm
痛み
大きい
手術視野
不良
入院期間
7日

胸腔鏡手術

傷の大きさ
5mm
痛み
小さい
手術視野
良好
入院期間
2泊

胸腔鏡による乳糜胸の手順

ステップ①
毛刈り消毒

滅菌を保つため、毛刈りと消毒を実施します。腹腔鏡手術であるためリスクは低いですが、徹底した感染防止対策を講じています。

ステップ②
トロッカー設置

トロッカーと呼ばれるトンネルを設置。そこからカメラや器具を挿入し、胸の中で手術を完結します。

ステップ③
心膜切除

心臓は薄い膜(心膜)で包まれた臓器です。この心膜を心臓を傷付けないよう慎重に切除していきます。

ステップ④
胸管結紮

胸管を含め周囲組織ごと一括して結紮。エンブロック法と呼ばれ、再発率が一番少ない術式です。真横にある大動脈から周囲組織を剥離する必要があり、繊細な技術が必要です。

ステップ⑤
乳糜槽破壊

お腹の中にある乳糜槽にハサミで切り込みを入れ破壊します。胸腔鏡から腹腔鏡に変更して手術をします。5mm×2の傷で実施できます。

ステップ⑥
皮膚縫合

傷口をナイロン糸で縫合し、手術終了です。術後胸水が出るため、ドレーンを設置し、吸引します。

ステップ⑦
2日後退院

術後一過性に発生する胸水がおさまる、2~3日後に退院できます。痛みもほとんどなく、尻尾を振って帰っていくうしろ姿が可愛いです。


監修者情報

平野 太陽

センター長

右京動物病医院OIKEをはじめ3病院4施設を運営。
獣医腎泌尿器学会 認定医。日本動物病院協会(JAHA) 総合臨床 認定医。
人間の医師の腹腔鏡技術 世界大会(団体の部)優勝。
Advanced Laparoscopy Masterclass in Bucharest(ルーマニア) ~腹腔鏡マスタークラス修了。
奈良動物二次診療クリニック第6期研修修了(腫瘍科、画像診断科、整形外科、軟部外科) NARCシニア研修修了。
『動脈塞栓術を利用した腹腔鏡肝腫瘍切除』を世界で初めて成功し世界内視鏡学会2025にて報告。

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いつでもお待ちしています。

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